腸管GVHDに対する食事療法【腸管GVHDに対する食事療法】GVHDとは、ドナー由来の細胞が移植を受けた患者さんの体を攻撃する免疫反応の一種です。症状が現れる時期によって、急性と慢性に分かれます。 ◎急性GVHDは移植後100日以内にあらわれる症状です。症状が早く進行する場合は入院治療が必要です。 ◎慢性GVHDは移植後100日以降にあらわれます。緩やかに経過する症状がほとんどですが、まれに急性GVHDのように強い症状が現れ、日常生活に支障をきたす場合もあります。 GVHDの症状は、皮膚,消化管,口,目,肝臓などに多く見られ出現の程度は個人差があり、全てがあらわれるものではありません。特に消化管の急性GVHDは、下痢や吐き気・嘔吐,食欲不振などで入院治療が必要で、あわせて特別な食事療法が併せて行われます。 【食事の段階と実際例】 2003年5月11日に退院前のお試し外泊中、容態が悪化し5月12日から病院で食事が全くとれなくなった。アスペルギウスによる肺炎で1ヶ月咳が止まらず、酸素吸入をしてまったく食欲はなかった。トイレ以外ベットから出ることはなく、2回くらい川を渡りそうになった。5月18日から6月17日までの31日間完全に絶食・絶水をした。 --------------------------------------------------------------------- 1)0段階 形態:流動 許可食品・料理:果汁入り飲料(粒なし・柑橘不可)スポーツ飲料 栄養量:500~2000ml 備考:濃度の制限あり 2003年6月18日昼食 ほうじ茶・スポーツ飲料・果汁入り飲料 --------------------------------------------------------------------- 2)1段階 形態:流動 許可食品・料理:おもゆ・葛湯・清汁・コンソメスープ・100%果汁・味噌スープ 栄養量:エネルギー300~350kcal タンパク質5~7g 脂質1.5~2g 食物繊維0~1.5g 備考:普通程度の味 2003年6月23日昼食 ほうじ茶・おもゆ・清汁・100%果汁・練り味噌 --------------------------------------------------------------------- 3)2段階 形態:3分・ミキサー・すりつぶし 許可食品・料理:芋類・野菜・果物缶・野菜ジュース・うどん・豆腐・白身魚 栄養量:エネルギー600~650kcal タンパク質20~25g 脂質5~8g 食物繊維0~8g 備考:液体から粒へ 2003年7月18日昼食 ほうじ茶・3分粥・味噌スープ・冷奴・マッシュポテト・リンゴミキサー・練り味噌 2003年7月19日夕食 ほうじ茶・3分粥・味噌スープ・鮭蒸し物・かぼちゃんの茶巾つつみ・練り味噌 --------------------------------------------------------------------- 4)3段階 形態:全粥 許可食品・料理:卵・パン・バナナ・リンゴ 栄養量:エネルギー900~1000kcal タンパク質30~35g 脂質10~13g 食物繊維8~9g 2003年7月24日昼食 ほうじ茶・全粥・豆腐味噌汁・白身魚蒸し物・里芋とニンジンの炊いたもの・ワカメとシラスのおひたし・ぶどう 2003年7月23日夕食 ほうじ茶・全粥・おふ味噌汁・おでん・冷奴・練り梅 --------------------------------------------------------------------- 5)4段階 形態:米飯 許可食品・料理:青魚・油(3gまで) 栄養量:エネルギー1200~1300kcal タンパク質40~45g 脂質15~20g 食物繊維9~10g 2003年9月14日昼食 ほうじ茶・シーフードカレーピラフ・卵ワカメスープ・生野菜サラダ・ネーブル 【感想】 うがいはしても1ヶ月間水も飲まないと、飲み込むことが出来なくなります。まずスポーツ飲料を少しづつ口に含ませて飲み込みます。普段は一気飲みだと思いますが、150cc飲むのに1時間はかかります。しかも苦痛なのでこのまま食事が出来ないのではないかと思えます。1日中これを繰り返し1週間毎日行いました。これは完全なリハビリでした。 次は重湯やコンソメスープなど少し栄養価の高いものが出てきます。飲みこむことに慣れて、食事の時間中に終わることが出来ます。2週間ぐらい続きますが後半は粒を取れることが待ち遠しく感じました。 3分粥に米粒が入っていたときは、うれしくて噛みしめたものでした。味覚障害がありましたが、甘味は損なわれることなく、ジャガイモやカボチャのうらごしも甘くて好きになりました。以前は甘いものをもらっても食べないくらいだったんですが…。果汁も粒が入っていたし、早く固形物が食べたいと思えるようになっていました。 3分粥の期間は10日くらいで、すぐに全粥食になったような気がします。食べられるものは増えましたが、脂質と塩分が足りなく物足りなく感じましたが治療だと思って我慢していました。次の米飯まで1ヶ月(8月2日に胆のう炎で腹部が激痛で1週間ぐらい食事を抜いた)じっくり低脂質の食事で腸管をいたわりました。 【入院が長くなった理由】 どんどん食事の段階を上げて行きましたが、GVHDは治まる気配が無く。ほとんど常食に近くなった時は、食欲がなくほとんど残していました。私が退院出来なかった原因は、ここにありました。 イ)腸管から栄養が吸収されていない。 ロ)突然GVHDの症状がひどくなる。 ハ)疼痛で痛み止めを止められなかった。 腸管から栄養を吸収できてないことは、2日に1回の採血でわかっていました。IVHからの栄養剤輸注でどうにか体を維持していたのです。GVHDによる下痢も止まりませんでした。胃や十二指腸にあった腫瘍は、この時期表面的には消えていましたが、小腸などへその周りがジグジグする痛みは取れませんでした。今から思えばガン細胞とリンパ球の一大決戦だったのでしょう。 なかなか改善されない腸の状況にもう一度絶食をして、腸内を整える事になりました。以前は1ヶ月でしたが今度は2ヶ月を予定しました。1年も入院していたのに病院食に飽きなかったのは絶食や、いろいろな段階の食事を体験していたからかもしれません。 |